6回目は島根が舞台となったNHK連続テレビ小説「だんだん」でヒロインの父親役を熱演された俳優・歌手の吉田栄作さんです。島根への思い入れや隠岐でプロデュースされているカフェについて伺いました。
高校生の修学旅行で津和野を訪れて以来の島根は、1991年頃に行った出雲でのライブでした。移動中に大雪に見舞われましたが、僕はそういうトラブルがあると逆に燃えますし、お客様も盛り上がってくださって記憶に残るライブとなりました。その次のご縁が「だんだん」です。
ヒロインの父親役で元ボクサーという設定でした。撮影前に四軒のシジミ漁師さんから話を伺って、漁師一家の生活やシジミ漁の体験をして、役作りの参考にしました。例えば、漁は週3日に抑えて資源保護に努めていることや、湖の淡水化計画を仲間で阻止したといった話から、宍道湖やシジミに対する想いや歴史に触れられました。
実は、淡水化計画の反対運動で大活躍された宇崎竜童さん似の漁師さんから「娘とはあまり話をしないです」という話を聞いたときに、僕が演じる田島忠の人物像が見えてきたんです。
松江や宍道湖、シジミ、家族を愛し、もっともなことを言うけれど、夢を追っては周りを巻き込み、それでも周囲が放っておかない人柄の男じゃないかと。僕の体で演じ、魂を注いだ男ですから「俺が奴のことを一番よく知っていて、奴も俺のことをよく知ってくれている友達」のような存在ですし、影響も受けました。ボクシングに再挑戦する彼を演じながら僕の心の中にくすぶる音楽への想いに気付き、音楽活動を再開したんです。
そんな彼の魂を松江にずっと置いておくつもりですし、今も彼がシジミ漁をしている気がして、一年に一度は松江を訪れています。彼を実在した男として愛し、彼同様にこの町が好きだという島根の仲間に会うのも楽しみですしね。
役柄上、湖側から町を見る機会が多かったのですが、町の暮らしが宍道湖と共存共栄していて、それがとてもいいなと思ったんです。偶然に出会った誰もが「松江で暮らしていきたいんだ!宍道湖に沈む夕日を見ながら人生を過ごしたいんだ!」といいますし、その気持ちがよく分かるんですよ。水の都ならではの情緒が素敵ですから。
「セキヘキノカケラ」といいます。セキヘキ(赤壁)は島の西海岸の断崖でパワースポットなんですが、そのカケラ程でもいいからパワーのある場所になればと名付けました。
店内から海が一望でき、店の外ではデッキチェアに寝転びながらお料理やお酒を楽しんでもらえます。3年目を迎える今年(2011年)は9月25日まで商ってます。
ご縁ですね。「だんだん」で僕には隠岐のシーンがなかったけれど、ドラマのスタッフが「島の人達が栄作さんを待っていますよ!」と誘ってくれたので、フェリーで向かったら、本当に島の皆さんが待っていて、良くしてくださったんです。
それで西ノ島と知夫里島を案内してもらううちに、知夫里に飲食店がないのを知り、それでいろいろ尋ねたら、かつて一軒だけあった店が残っているというので見せてもらうと、放っておくにはもったいない程良くてね。「僕が何かしましょうか」と言ったのが始まりでした。
店は東京の知人に協力してもらってます。彼らを最初に島に案内した時、赤ハゲ山では海に月が反射しながら刻々と景色が変わり、風が地球の心音のような音をたてて吹き、宿では露天風呂に入って漁火を見て、集まってくださった島の皆さんと立派なアワビや新鮮な魚を囲んで宴会するうちに、店をやるって即断してくれました。知夫里はなかなか行こうとは思いつかない場所にあるけど、行くと絶対好きになれる島ですよ。
僕は遣島使という島根の観光大使でもありますので、島根の良さをPRし続けますし、これからもずっと島根に来ますよ!僕にとって一番大事な財産、「人」に会いたいですから。
俳優・歌手。東映映画「ガラスの中の少女」でスクリーンデビュー。以降、ドラマ、映画、舞台、音楽活動と多方面で活躍。11年は、パナソニックドラマスペシャル「屋上のあるアパート」(TBS)や舞台「シングルマザーズ」(二兎社)で好演。映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」(12月23日から全国上映)では五十六が最も信頼を寄せる部下三宅義勇を演じている。
僕の場合、現在ご縁があるのが出雲と隠岐ですが、県西部の石見地方にも津和野などの素敵な場所がたくさんあるので、機会があれば又訪ね歩きたいんです。出雲、石見、隠岐それぞれに文化も違えば、言葉も違って、それがまた面白いと思うんです。皆さんも長い時間をかけてそれぞれを味わってもらいたいですね。